なぜSpaceXはIPOをするのか ― RSIが閉じた後の世界
2026年2月にSpaceX社とxAI 社の合併して以降、多くのxAI の主要幹部が辞めていった。
その中でJimmy Baが2月11日、「Recursive self improvement loops likely go live in the next 12mo. It's time to recalibrate my gradient on the big picture」と残していた。これは自分なりに解釈して意訳すると「退社する理由はAIに仕事が奪われるので、自分の将来を見直す」と読む。優れたAI技術者ほど、自身の仕事を凌駕するAIを理解している。将棋、碁などの分野でも人間が設計したAIが設計者自身を超えていった。同様の構図が、今や「AIを作るためのAI」、すなわちプログラミングやモデル改良の領域でも起きつつあるのだ。
Recursive Self Improvement(RSI)とは、単にモデルが賢くなることではない。
本質は「改良のループそのものが、人間の手を離れて閉じること」にある。
これらはかつて人間の手を介在していた。しかし現在では、その多くがAIにとって代わられつつある。RSIのループは、完全ではないにせよ、確実に「閉じつつある」。
2025年7月21日イーロンは「The continuous RL improvement of Grok feels like AGI. Grok 4 today is smarter than grok 4 a few days ago」と述べている。これはRLが連続的且つ永続的に、そして、”自律的に”行われていることを示唆している。実際最近のGrokは急激に賢くなっていると思う。
サム・アルトマンも5月にブログで'Gentle Singuarity'を宣言し、Google Deepmindは5月14日にAlphaEvolveを発表している。名前にEvolve(進化)と名付けたのはRSIを意識してのことであろう。進化は極めて自律的な仕組みだからだ。
イーロンが2025年12月にSpaceXのIPOを決めたのも、RSIのLoopが閉じるのを見越してのことでないかと推測する。もしRSIのLoopが閉じ、AGIが実現されるのならば、問題は知性そのものではなく、どれだけ大規模に展開できるかとなるからだ。
RSIによって知性が爆発的に伸びれば、計算機資源の需要も爆発する。需要を賄うには地上だけでは足りず、宇宙にデータセンターを置くという発想に行き着くのは自然な帰結。AGIを大規模に展開するという発想は、Teslaの掲げる「amazing abundance(驚異的な豊かさ)」というミッションとも重なる。
RSIのループが閉じた後、AIの知性は指数関数的に伸び、大規模に展開されれば、それは文明の駆動力そのものになる。RSIのループが閉じることはは、文明規模で新しいループが立ち上がる瞬間となる。
クンクメールとムエタイ 元祖、本家をめぐる議論と商業化
2023年ではカンボジアはSouth East Asia Gameホスト国であった。キックボクシングのことをクンクメールと表記したことで、タイは競技の参加を拒絶した。
https://en.wikipedia.org/wiki/Kun_Khmer_at_the_2023_SEA_Games
クンクメールとムエタイ、何が違うのだろうとクンクメールジムを探して入会した。結論から言えば、判定を決めるポイントに違いがあるとのこと。クンクメールもムエタイも国際化を進めており、欧米人や東南アジア各国の競技者が試合に参加しており、ルールも統一されているようだ。
バンコクのラジャダムナンスタジアムでムエタイを観戦した後、プノンペンのテレビ局が開催しているクンクメールの試合も現地観戦した。タダで入場でき、賭けでものすごい盛り上がりであった。両方の会場とも判定を担当するジャッジは箱の中に入り、結果が見えないように工夫していた。
https://maps.app.goo.gl/KSLDgmPZiUHTi2Cx7
カンボジアにはブライダルスレイ、タイにはムイブランなどの古武術がある。歴史を紐解けば、どこの国も軍隊を持ち、戦闘用の武術がある。そしてそれらは素手でなく、武器を使い、倒れている相手も攻撃できるはずだ。ハイキックなどは転がされる危険性があるため、戦場ではメインの手段にはなり得ない。
タイ、カンボジアといくつかのジムに通ってみたが、どこも
1。ストレッチ
2。ウォームアップ(縄跳びなど)
3。ミット打ち(パッドワーク)
4。筋トレ(コンディショニング)
5。ストレッチ、クールダウン
と、とても系統だっていた。ストレッチは種類が多く、筋トレも腹筋が中心でまた種類が多い。非常に近代的だと思った。
ミット打ちも蹴りなどを受ける大きなパッド、パンチのみを受ける小さなパッドなど道具も目的によって使い分ける。サンドバックも重さ、形、そして固定式や吊り下げ型など様々な種類がある。
キックボクシングはムエタイを参考にし、日本で作られた。1963年には空手家三人がバンコクに飛び空手とムエタイの対抗戦をムエタイルールで行い、2勝1敗で空手家が勝ち越した。1敗を喫した黒崎健時氏(引率で同行したが急遽参加)はムエタイの肘や蹴りに驚き、打倒ムエタイを掲げて1969年に極真空手を離れ、目白ジムを設立し、1978年にはラジャダムナンで外国人初の王者に藤原敏男氏がなった。
極真空手や目白ジムにはオランダ人のヤンプラスなどが在籍し、それがK1大会のオランダ勢の活躍に繋がってくる。単発ではなくパンチとキックを組み合わせたコンビネーション攻撃と筋骨隆々なファイターが織りなす迫力まんてんの数多くのKOシーンをオランダ勢がキックボクシングで見せてくれた。現在のラジャダムナンのムエタイ試合広告でも「KO率が高い」などアピールポイントして全面に出している日がある。
格闘技を語る上で大事なのは商業化。以前ならばK1、現在ではOne Champoinshipなど高度に商業化された団体があり、そのことが選手の待遇改善のみならず、専門家の招聘を含むトレーニング方法の進化を促す。そしてムエタイの商業化の成功を受けて、カンボジアもクンクメールの大会を始めたという。伝統は国際化と商業化の波が強くなるにつれて原型から離れていくが、元祖、本家の議論は大きなビジネスになり注目を浴びるほど盛んになる。その意味でOneChampoinshipを立ち上げたチャトリCEO兼会長の貢献は大きいのではないか。
タイ王国
カンボジアを離れてタイに移り住んで3ヶ月が経つ。シンガポール、台湾、カンボジアと6年ずつ国を変えており、今年からタイに住むことになった。
タイに来る前には現地の人に宿題を出されていた。その宿題とは「外国人はタイのことを微笑みの国と呼ぶ。しかし、外国人はタイ人の微笑の本当の意味を知ろうとしない。タイ人は苦しい時も怒っている時も、悲しい時も、微笑むのだ。君は”タイ人の微笑”の本当の意味を理解することはできますか?」
タイに来てからは、この宿題を考え続けてきた。新鮮な気持ちが残っているうちに今思うことを書き留めてみたい。
タイは欧米の植民地になったことがない。そのためマレーシアやカンボジアと違い、古来からタイにある封建的な価値観が残され易い。またタイは階層社会である。感情を押し殺して人に接し、何があろうと微笑むのは王族と接する臣民としては特性ではないであろうか。
タイ人はあまり計画性がないと聞く。それは不確実性に対する許容度の高さでもある。実際、先月バンコクで地震地震があったが、政府の対応は想定していない地震に対して、即座にビルの安全確認ができる業者の一覧、確認が終わったビルの一覧のサイトを開設しており迅速だった。また危機管理用のLINEアプリもあった。
地震がないシンガポールでも移転後一年目に地震があった。タイでも自分が移り住んだ後に地震があった。地震の後、自分の家は立ち入り禁止となっており、また部屋に戻った後も、天井と壁には大きなひび割れができ、浴槽のタイルが剥がれ落ち、破片が床に散らばっていた。悪いことは続くもので、次の日のフットサルでは、左足脹脛の肉離れを起こし、ギブスを付け松葉杖をつく生活を強いられた。その後、突然親指が腫れ出したりと、悪いことが続いたのでお寺に行って「お祓いみたいなものが必要なのでは」と、タイ語の先生に話題として話してみた。
そしたら、大事なのは良いこと、悪いことも自分の捉え方。心のあり方を変えることが大事。ご利益を求めて、仏像を拝むのはヒンズー教的な考え方であり、本来の仏教ではない。しかしタイ人の若者でも、仏教をヒンズー教的に捉える人がいると教えてくれた。ヒンズー教と仏教の対立や融合はインド文化圏での歴史上のことかと思っていたが、現代のタイでは今なお進行中な現実なのだ。
ここで一つの仮説に辿り着く。「心のあり方」を制御する仏教の教えが階層社会に持ち込まれた際、それは上位階層からの理不尽を甘んじて受け入れさせる方便として使われないだろうかと。そんなことを考えていたら、京都の東寺にある空海の立体曼荼羅が思い浮かんだ。悟りを完成させた如来。悟りを目指し他者を深い慈悲で救う菩薩、武器を持ち悟りの障害、煩悩を打ち砕く明王、武器を持ち三宝を守る天部。「心のあり方」のみで完結させるなら如来だけで十分だろう。しかし空海の立体曼荼羅で表現した世界は、現実への慈悲深い介入を見せる菩薩、障害や悪を取り除く明王、秩序をもたらす天部のようなダイナミックな外的要因が表現されている。
「タイ人の微笑み」を単に「受容性と寛容性」と捉えるではなく、ダイナミックに自己の欲を満たすための政治的な手段、そして時には逆説的に怒りを表す手段となっている可能性も考慮に入れながら本当の意味を探って行きたい。
人生の羅針盤としての大前研一氏
大前研一氏を初めて知ったのは、イギリスに留学してる時であった
イギリスで経済学を学んでいる時、父が大前研一の書籍を送ってくれたのだ。
その本にはアメリカはドルの価値を支配している。アメリカは貿易赤字を日本との交渉で問題に挙げるが、ドルで決済する国際貿易ではアメリカは単に通貨という紙幣を印刷して輸入しているだけであり、貿易赤字額もドル建で、ドルの価値はアメリカが支配しているから問題ないという内容であった。
貿易赤字額という数字の額面ではなく、赤字額の実質の価値に焦点を当てている捉え方に衝撃を受けた。勉強しているマクロ経済学と全く異なると。この考え方をマクロ経済学の教授に言っても、納得していないようであった。図書館で本を探したが、近い考え方をしていたのはフィッシャーという学者の本だけであった。調べれば大前研一氏は経済学の専攻ではない。それなのに経済に対して深い見識がある。優秀な人もいるものだと驚いた。
イギリスでは学生寮に住みながら、英語の勉強にとBBCラジオを聴いていたら、大前研一氏がBBCラジオに出演していた。日本のことを聞くためにBBCは大前研一氏に尋ねるのか。彼は日本の代表なのだと驚嘆した。似たような経験として、かなり後になって台湾に住んでいた時、中国語の勉強にとVOA中国語を聴いていたら、遠藤誉氏が出演していた。その時、彼女の中国語を聞き、発音と語彙に驚かされたことがある。
卒業後は大前研一氏の本をよく読むようになった。その中で「考える技術」という書籍だと思うが、「考えるとは自分に質問すること」という記述があった。その明快さに衝撃を受けた。頭の良し悪しを語る人が多いが、ここまで明確に頭を使うことを定義している言葉を他に知らない。
また「企業参謀」ではKeyForSuccssという概念が紹介されており、成功には様々な要素があるが、その要素の中でも大小重要度が異なることが示されていた。ならばKeyForSuccessを見つけるために自分に質問し続けることが重要ではないかと悟ったような気がした。
イギリスの大学を出てから独学でプログラミング技術を身につけ、外資の投資銀行に就職した。それも大前研一氏の書籍のどこかに「海外で工場の売却をしてきて」と頼まれたらできるようになれとの文章があり、紀伊國屋で英語のコーポレートファイナンスの本を買ってきて読み始め、現在価値やデリバティブなどを勉強していたからだと思う。氏は大事なスキルとして、「英語、IT、金融」を挙げており、外資の投資銀行で働くことはそれらのスキルを身につける最適解だと思っていた。
行きたい旅行先があれば、できるだけすぐに行き、食べたいレストランなどを見つけたらすぐにいく。「後にとっておく」ということをせず、できるだけ早めに行くようにしてきた。蓼科やタイプーケットのリゾート地アマンプリなどは氏の本で知ったから尋ねた場所だ。職業的にも、趣味などの私的活動にも氏の書籍は自分の人生の羅針盤となってきた。カンボジアに移ったのも、若い世代と働きくべきという氏の発言が後押しになったていたと思う。
人生の羅針版となるロールモデルは、プログラミングなら中島聡氏。彼のプログラムをダウンロードして使ってみたり、投資については孫正義氏、はたまた歴史上の偉人などと分野別に分かれていったが、一番大きな存在は大前研一氏である。間違いなく彼の書籍によって自分の人生の可能性は広がり、導かれていた。
やはり読書は大事だと思う。
中年の危機とAIのもたらす未来
自分が代表を務める会社とその社員が他の会社に売られることとなり、契約交渉や資金受領などが済み、大きな達成感とともに喪失感があった。大前研一の著書「50代からの選択」を20代中頃に読み、50代までで会社の代表でなければサラリーマン人生は終わっているとの記述があったと思う。大前研一氏に触発されてから歩んできた職業人としての経歴は、会社を売却したことで、一つの大きな区切りを感じられた。
その後、バイクなどは危なくて乗り回すことは考えられないことだったが乗り始めたり、格闘技なども興味がなかったが、格闘技のジムに通ったり、格闘技関連の情報に大変な興味を持つようになった。価値観や、優先順位が変わったのだ。
振り返ってみるとそれが「中年の危機」と呼ばれるものではないか。
「中年の危機」とは何か。それはアイデンティーの更新と考える。
人は生まれた時から大きなバスケットを背負っている。始めは空っぽだが、親の期待。社会の価値観などが、そのバスケットに投げ込まれ続ける。その中で培った価値観に沿いながら自己実現を図り、自分のプライドを満たすような生き方を強いられる。
中年とは、人生の有限性が現実味を帯びて迫ってくる時期。会社では天井が見え、子供は育ち親としての役割が変わり、病気などをすれば若い頃とは違うことを実感する。人生の有限性を実感することで、背負っていたバスケット一度下ろし、中に入っている価値観の内、残りの人生に本当に重要なことだけをバスケットの中に残す、棚卸しが行われる。会社の期待、親の期待等、本当に自分を幸せにする価値観なのだろうかと?本当はもっと他にやりたいことがあったのではないか?
「中年の危機」は残された人生の中で、悔いなく生きるための優先順位の棚卸し期間でもあり、大事な作業。終わりが見えない時と、終わりを強烈に意識する時で優先順位が変わるのは当然のこと。その意味で中年の危機はチャンスであり、必要なこと。
これからAIやロボットなどの技術が職業を奪う、大きな社会の転換機がくる。良い大学を出て良い会社に入り、そこで昇進していくことが大事な価値観であったとしても、会社から見れば同じことを安い費用で代替できるならAIに容赦なくとって代わられるであろう。その時、社会の価値観に縛られながら努力し、プライドを育んで生きてきた人々は、大きな喪失感を得るであろう。それはあたかも社会全体が経験する中年の危機のようなもの。
しかしその避けられない喪失こそが、人間性の本質に立ち返らせる強力な触媒となる。AI以前の旧時代の価値観が詰まったバスケットを社会全体で下ろし、真に未来に持っていくべきものを問いただす棚卸し時期が近づいてきている。
カンボジアの将来
ポル‧ポト政権の崩壊後、カンボジアの人々の心は荒れていた。尊厳を認められない生活を長く強いられたため、人々の心の中に怒りが充満していた。
尊厳を奪われた者たちは、その尊厳を取り戻すためにお金に走る。大きな家、高級な車が優越感となり、「尊厳の損失」を癒してくれると考えるのは普通のことだ。自分はこの「尊厳の損失」が、カンボジアに多くのオンライン詐欺拠点があることに間接的ながら影響を与えていると考えている。国家の尊厳のため清貧を保つより、個人の奪われた尊厳を取り戻すため個人が資金を得る。
だから2023年に首相交代を含む、指導者層の世代交代はカンボジアにとって一つの転期となる英断だった思う。過去のトラウマを直接的に経験し、傷つき怒りを充満させていた世代から、豊かさを知る若い世代の指導者たちにバトンが渡った。過去のトラウマに起因する負の遺産を断ち切ることは、新しい世代のみが成し遂げられること。
自分はカンボジアの将来に期待している。特に衛星を使用しインターネット網構築に興味がある。衛星通信は空が雲で覆われている時間が少ないことが重要であり、カンボジアはAesan諸国の中でも特に、気候的、地理的優位性がある。衛星のダウンリンク(地上局)をカンボジアにおき、ベトナム、タイに陸路で光ファイバーを繋げばシンガポールの海底ケーブル集積地のように、衛星通信の集積地になり得るのではと考えている。最近SpaceX社がカンボジアへの投資を考えている記事が出たが、それもカンボジアの恵まれた気候とロケーションによるものではと考えている。通信の集積地になれば、電力の問題を解決することを前提にデーターセンターの集積地になることも可能だ。
https://www.khmertimeskh.com/501644060/elon-musk-cos-eye-cambodia-as-top-investment-destination/
人口規模:人口が少ないことがボトルネックになることも考えられるが、少子高齢化が進むタイでは隣国、ミャンマーやラオスなどからの出稼ぎ者が労働人口の問題の解決策となっている。効率的な政府が実現すれば、カンボジアでも同様の形で人口規模が少ないことに対応できる可能性があると考える。
国家イメージ:現在タイは、カンボジアとの国境に壁を建設することを考えている。自国民が捕えられ強制的に働かされる国が隣にあれば、タイ側としては自国民を守るためにも壁の建設を考えることは当然のこと。カンボジア側から見れば、カンボジアが危険な場所であることを知らしめるシンボルとなる。
https://www.bangkokpost.com/learning/advanced/2972466/thailand-considers-wall-on-cambodia-border
トランプ政権の関税政策により、ASEAN地域での貿易のつながりがより重要になる昨今。それを阻む要因が、汚職問題。2024年度番のCPIではカンボジアは180カ国中、158番目のランキングとなっている。通信の集積地となるためには国家と政府への透明性と信頼が重要となる
https://www.transparency.org/en/cpi/2024
自分はこのランキングがカンボジアの将来を決めると考える。汚職とはお金で政府高官が動くということ。米中の対立を始め、地政学リスクが国際社会で高まる中で汚職が蔓延すれば、他国の意を受けて動き、麻薬の輸出やサイバー攻撃の拠点となるなど、相手国を攻撃するための代理国家となりやすい。そのことはASEAN地域内の連携が重要性が増す中、地域全体の安全性にも影響を与えかねない。
世代交代を機会としてとらえ、汚職問題を解決し、ASEAN地域内での投資の受け皿となりつつ、自国産業の発展が進むのか、それとも汚職により、地政学的対立の代理国家の闇に引きずられるのか。その大きな分岐点は、国を動かすエリート層の人々が持つ尊厳、心のあり方に依存すると考える。
宇宙を制するものは世界を制する その3
前回のブログで、イーロンマスクがシアトルで「インターネットを宇宙上に、作り替えることになるだろうit will be like rebuilding the Internet, in space.」と述べた言葉を引用したが、なぜシアトルなのだろうか。結論を言えば、シアトルはマイクロソフトやアマゾンを初め多くのI T技術者が集う場所。イーロンマスクは宇宙技術の発展は、ロケットエンジンのような内燃機関のエンジニアだけでなく、IT技術が重要になると見据え優秀なソフトウエア技術者を求めていた。
スペースX社のロケットエンジンは比較的小型のエンジンを束ねるクラスターエンジン。比較的小型のエンジンを使う場合、1機のエンジンの値段は下がり、且つ量産効果が出る。またクラスターエンジンでは前回のスターシップ打ち上げで証明されたように、1機、2機と動かなくても他のエンジンでカバーでき信頼性が向上する。問題は小さなエンジンを多く束ねると、エンジン間の出力調整管理が複雑になる。その管理をソフトウエアの問題と捉え、リアルタイムにエンジン管理をするソフトウェアシステムを作り上げたスペースX社はロケットの価格優位性、信頼性、柔軟性、即時対応性を一度に手に入れた。これはロケット開発を内燃機関の工学問題としてだけ捉えていたのでは生まれてこないアプローチだ。
しかしI T産業の中では既に先例がある。グーグル社だ。グーグル社の革新性は安価なP Cを束ね、クラスターとすることで性能をあげ、データーセンタ規模のクラスタ群が一つのスーパーコンピュータとして動くような仕組みを作り上げた。グーグル以前ではコンピュータの性能を上げるには、より大きく高価なコンピュータを購入し、置換えること(スケールアップ)が一般的であった。それをグーグル社は置換えではなく、クラスタ群に安価なP Cを付け足すこと(スケールアウト)で対応した。スケールアウトの方が費用対効果が高いのは明確だ。I T技術者でもあったイーロンマスクがロケット開発においてスケールアウトの概念を持ち込んだのは当然であろう。
以前の通信衛星ではG E O(地球から遠い衛星軌道)が主流で、L E Oは主にセンシングや気象観測に使われていたが、現在L E O(地球の地表に近い衛星軌道、高度約500キロ)において通信衛星の革命が起きている。通信衛星を地球から遠く離れたG E Oの軌道に乗せ、地球の自転と合わせた形で衛星が地球の周りを周回(公転)した場合(具体的には高度約36,000キロメートルで速度約3キロメートル/秒の円軌道)、通信衛星は地上から見上げて、常に静止しているように見える(静止衛星)。また高度が高いため、静止衛星1機で地表の約40%をカバーできる。そのため地球全体をカバーするために必要な衛星の数が少なくてすみ、また地上に設置するアンテナもパラボラ型で固定式と単純なものとなる。
翻ってL E O軌道を飛ぶ衛星は、地上から見て、静止しておらず、また地表から近いため、地表全体をカバーするには多くの衛星が必要となる。地上に設置するアンテナは衛星の位置を追跡するため首振り機能が必要となる。また衛星間では次に同じ位置に飛んでくる衛星との引継ぎをリアルタイムで管理しなければならない。最近のアンテナ技術は半導体技術の進化もあり、フェイズド・アレイという電波を重ね合わせることで電波に指向性(方向)を持たせ、送受信の効率化が図られていため指向性管理も必要だ。さらに衛星は高速で移動するので近づいてくる時には周波数が高くなり、衛星が離れていく際には周波数が低くなる(ドップラー効果)。このような場合、衛星の位置、速度を元に送受信した周波数からドップラー効果の影響を取り除かなければならない。
このようにL E O軌道上で高速に移動する衛星通信で信頼性の高い無線通信を確立するためにはリアルタイムでさまざまな計算を行うソフトウエアが必要になる。通信衛星のGEO軌道からLEO軌道への移行の裏では、宇宙産業においての通信用ソフトウエア群の集積とパッケージプロダクト化が既に始まっているのであろう。Star linkブロードバンドサービスの成功に代表さえるように、宇宙を調査研究の学術の場としてだけでなく、ビジネスフロンティアとして強く認識する時代が来ている。
米国のロケット開発においてベンチャー企業が、3Dプリンターの活用、炭素素材の活用、ターボポンプの電動化など、ロケット開発において新しい試みがなされるのは、ベンチャー企業として現金がショートしてしまう前にどれだけ早く、事業化・商品化できるかという切実な要請がある。「First Principle」から遡り問題を定義し、最適解、最短解、最小費用解を求めてイノベーションへの挑戦が促される仕組み作りが宇宙産業においても求められる。
ロケット発射管理、ロケット自動破壊管理、ロケット発射プロジェクト管理など、様々ノウハウをソフトウエアパッケージ商品としてまとめ、事業化していくかなどの発想を個々の技術者に持たせるには、今のJ A X Aのような仕組みが最適なのか再考する時期に来ているのではないか。産業にはサプライチェーンを通じてヒエラルキーが構築される。半導体産業のように、外国の宇宙産業が日本の宇宙産業に依存するような関係性を構築していかなければ、日本の宇宙産業の未来は底辺に落ち着き、経済安全保障の問題ともなる。気がつけば日本のロケットや衛星が、米国や中国の管理ソフトウエアや製造装置、部品、材料を購入しなければ発射できないということにならないように宇宙産業を長期的な視点で育てていく必要があると考える。
参考:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%BC%E5%8A%B9%E6%9E%9C
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E8%BB%A2
