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宇宙を制するものは世界を制する その3

前回のブログで、イーロンマスクがシアトルで「インターネットを宇宙上に、作り替えることになるだろうit will be like rebuilding the Internet, in space.」と述べた言葉を引用したが、なぜシアトルなのだろうか。結論を言えば、シアトルはマイクロソフトやアマゾンを初め多くのI T技術者が集う場所。イーロンマスクは宇宙技術の発展は、ロケットエンジンのような内燃機関のエンジニアだけでなく、IT技術が重要になると見据え優秀なソフトウエア技術者を求めていた。

 

スペースX社のロケットエンジンは比較的小型のエンジンを束ねるクラスターエンジン。比較的小型のエンジンを使う場合、1機のエンジンの値段は下がり、且つ量産効果が出る。またクラスターエンジンでは前回のスターシップ打ち上げで証明されたように、1機、2機と動かなくても他のエンジンでカバーでき信頼性が向上する。問題は小さなエンジンを多く束ねると、エンジン間の出力調整管理が複雑になる。その管理をソフトウエアの問題と捉え、リアルタイムにエンジン管理をするソフトウェアシステムを作り上げたスペースX社はロケットの価格優位性、信頼性、柔軟性、即時対応性を一度に手に入れた。これはロケット開発を内燃機関の工学問題としてだけ捉えていたのでは生まれてこないアプローチだ。

 

しかしI T産業の中では既に先例がある。グーグル社だ。グーグル社の革新性は安価なP Cを束ね、クラスターとすることで性能をあげ、データーセンタ規模のクラスタ群が一つのスーパーコンピュータとして動くような仕組みを作り上げた。グーグル以前ではコンピュータの性能を上げるには、より大きく高価なコンピュータを購入し、置換えること(スケールアップ)が一般的であった。それをグーグル社は置換えではなく、クラスタ群に安価なP Cを付け足すこと(スケールアウト)で対応した。スケールアウトの方が費用対効果が高いのは明確だ。I T技術者でもあったイーロンマスクがロケット開発においてスケールアウトの概念を持ち込んだのは当然であろう。

 

以前の通信衛星ではG E O(地球から遠い衛星軌道)が主流で、L E Oは主にセンシングや気象観測に使われていたが、現在L E O(地球の地表に近い衛星軌道、高度約500キロ)において通信衛星の革命が起きている。通信衛星を地球から遠く離れたG E Oの軌道に乗せ、地球の自転と合わせた形で衛星が地球の周りを周回(公転)した場合(具体的には高度約36,000キロメートルで速度約3キロメートル/秒の円軌道)、通信衛星は地上から見上げて、常に静止しているように見える(静止衛星)。また高度が高いため、静止衛星1機で地表の約40%をカバーできる。そのため地球全体をカバーするために必要な衛星の数が少なくてすみ、また地上に設置するアンテナもパラボラ型で固定式と単純なものとなる。

 

翻ってL E O軌道を飛ぶ衛星は、地上から見て、静止しておらず、また地表から近いため、地表全体をカバーするには多くの衛星が必要となる。地上に設置するアンテナは衛星の位置を追跡するため首振り機能が必要となる。また衛星間では次に同じ位置に飛んでくる衛星との引継ぎをリアルタイムで管理しなければならない。最近のアンテナ技術は半導体技術の進化もあり、フェイズド・アレイという電波を重ね合わせることで電波に指向性(方向)を持たせ、送受信の効率化が図られていため指向性管理も必要だ。さらに衛星は高速で移動するので近づいてくる時には周波数が高くなり、衛星が離れていく際には周波数が低くなる(ドップラー効果)。このような場合、衛星の位置、速度を元に送受信した周波数からドップラー効果の影響を取り除かなければならない。

 

このようにL E O軌道上で高速に移動する衛星通信で信頼性の高い無線通信を確立するためにはリアルタイムでさまざまな計算を行うソフトウエアが必要になる。通信衛星のGEO軌道からLEO軌道への移行の裏では、宇宙産業においての通信用ソフトウエア群の集積とパッケージプロダクト化が既に始まっているのであろう。Star linkブロードバンドサービスの成功に代表さえるように、宇宙を調査研究の学術の場としてだけでなく、ビジネスフロンティアとして強く認識する時代が来ている。

 

米国のロケット開発においてベンチャー企業が、3Dプリンターの活用、炭素素材の活用、ターボポンプの電動化など、ロケット開発において新しい試みがなされるのは、ベンチャー企業として現金がショートしてしまう前にどれだけ早く、事業化・商品化できるかという切実な要請がある。「First Principle」から遡り問題を定義し、最適解、最短解、最小費用解を求めてイノベーションへの挑戦が促される仕組み作りが宇宙産業においても求められる。

 

ロケット発射管理、ロケット自動破壊管理、ロケット発射プロジェクト管理など、様々ノウハウをソフトウエアパッケージ商品としてまとめ、事業化していくかなどの発想を個々の技術者に持たせるには、今のJ A X Aのような仕組みが最適なのか再考する時期に来ているのではないか。産業にはサプライチェーンを通じてヒエラルキーが構築される。半導体産業のように、外国の宇宙産業が日本の宇宙産業に依存するような関係性を構築していかなければ、日本の宇宙産業の未来は底辺に落ち着き、経済安全保障の問題ともなる。気がつけば日本のロケットや衛星が、米国や中国の管理ソフトウエアや製造装置、部品、材料を購入しなければ発射できないということにならないように宇宙産業を長期的な視点で育てていく必要があると考える。

 

参考:

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%89%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%BC%E5%8A%B9%E6%9E%9C

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E8%BB%A2