Get Things Right

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宇宙を制するものは世界を制する

軍事的に最も強大な破壊兵器は弾道核ミサイル。ミサイルは目的地まで誘導されなければならない。G P Sを使ってミサイル自身が位置を把握する方法もあれば、衛星を使って誘導する方法もある。どちらも宇宙技術だ。相手のミサイル発射の探知や発射基地の探索も衛星を使って行われる。

 

衛星は高度が低くければ安価なカメラやレーダでも性能が出せる。ただ高度が低いと引力や大気の影響を受けやすく、衛星の燃料がなくなればすぐに地上に落ちてしまい、使用期限が短い。だから衛星を頻繁に軌道に乗せる手段、ロケット技術でどれだけ費用対効果を高めるかが大事になる。

 

衛星のカメラもレーダ用アンテナも大きければ大きいほど、性能が上がる。しかし大きくなれば重くなるし、費用がかさむ。だから再利用可能な大きなロケットを作り、一度に多くの衛星を運び、一キロあたりの同一軌道投入コストを下げることが必要となる。

 

アメリカがすごいのは、ロケット技術という国防の一番目一丁目において、民間の活力を利用し、かつそれに呼応する起業家が出てくる(アメリカに来る)こと。国がリスクをとって実績のない企業にロケットを発注したり、SPACという実績がなくても先に上場して株式市場で資金調達ができる仕組みを作った。ある意味、米国は血気盛んな(そして往々にして権威を嫌う)起業家たちに、国防の底力を見出したと言える。このことはハンニバルの脅威に対応するため、法律運用を曲げ、若いスキピオ・アフリアヌスに権限を与えたローマ帝国の寛容性(clementia)に通じる。そしてその寛容性こそが、アメリカが大国であり続けるための要諦と自分は見ている。

 

ロケットは成功、失敗がわかりやすい。現在イーロンマスク氏が率いるSpaceX社が打ち上げ実績 、頻度(Cadence)が突き抜けている。それでは他のロケット会社がつけ入る隙間はあるのだろうか。自分はあると考えている。

 

衛星軌道には赤道から北にプラス、南にマイナスの角度がある。地球は自転しているため、衛星の進む向きと自転の向きが重なれば、比較的長い時間衛星は頭上にとどまる。つまり衛星でカバーしたい地域が日本ならば日本の上空をできるだけ長く横切るような角度、高度をつける必要がある。それぞれの衛星はカバーしたい範囲が異なり、また必要な大きさや個数、そして打ち上げ時期など、さまざまな要件の組み合わせがあり、一つのロケット会社が全ての需要を満たすことはない。軌道上の衛星は、一つの機器でより多くの人に使ってもらえる、とても影響力が大きい技術であり、打ち上げ費用が下れば、より多くの需要が喚起されると考える。

 

安く大量に生産することで製造業の市場を広げてきた日本が、宇宙産業においても民間の力で大量生産で価格を押し下げることができれば、大きな産業となすことができるのではないだろうか。まずはそのための環境整備が必要と考える。