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  プログラミングのための線形代数 平岡 和幸著

本を読んでいて行列の掛け算ABを見たら、頭の中で「ガチャ、ガチャ」と行列Bを左90度倒してAに(写像のため)入力していくイメージが自然と浮かんだ。行列は写像だ、写像だ、写像。。。。と頭にこだまする
この本のおかげで読める本が広まった。ありがとう。「2変数の変数変換における置換積分の公式」も身近になった。著者は読者に豊かなイメージを持たせることができる稀有な人材だ。

自分と線形代数とのなりそめは浪人時代にまでさかのぼる。高校で文型コースだったため数学を履修しなかったが、大学受験を数学で受けようと思い立ち、教科書の卸問屋に数学の教科書を買いに行ったことから始まる。その中に「行列」があった。その夜深夜まで読みふけり、「数」の演算とは異なる演算が世の中に存在(定義)できることに驚き、かつ様々な広がりを持つことに感動した。

大学に入り教養で「行列」を履修すると行列がN次になっていた。大きな黒板に黙々と計算式が書き出され、N次の行列のためやたらとノートのスペースをとる。意味も分からず、ひたすら黒板を書き写していた。Aij のijの小さな添え字が重要なのだが、どちらがi,jなのか良く見えない。サラスの公式等暗記ばかり強いる講義を受けて、「本当に意味のないものだな」と心底感じた。振り返ればその数学の先生も「行列」に対して豊かなイメージを持っていなかったのだろう。記憶力が良いというのは利点でもあるが、頭の中で理解という「圧縮」作業をする動機が失われる。

社会人になり放送大学で「線形代数」を履修した。名前も「行列」から「線形代数」へ。この講義は「線形代数」のもつ「構造」を意識するきっかけを与えてくれた。ただ郡の概念、次数を減らす余因子展開、はたまた阿弥陀くじと「線形代数」は人類の人知を超えた宇宙人が作ったような分野だなとの印象を持った。きっと微分積分は加速度、面積等の探求といった身近な文脈で語られるのに対し「線形代数」は「連立方程式をいきなり括弧に書き換え、けったいな掛け算を定義すればあらあら不思議とうまくいく」というような文脈で語られるからだろう。

翻って「プログラミングのための線形代数」は入力、出力、定義の仕様という言葉を使い、一貫して写像の文脈で語られている。また説明には言葉を尽くし、読み飛ばしてよい箇所と、そうでないところ明確にすることにより読者を「宇宙人の思考を読み取ろう」という努力から開放している。

プログラミングのための線形代数

プログラミングのための線形代数

線型代数入門 (’03) (放送大学教材)

線型代数入門 (’03) (放送大学教材)