Get Things Right

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臨終

祖母が口から食事を取れなくなり、容態が変化したと連絡があり、急遽実家に戻った。

横になっている祖母に話しかけると、問いかけに答えようとする意思をみせ、力を振り絞って目を開けてくれた。その目はなぜが自分には薄い緑色に見え驚いた。家族が祖母に話かけると、表情が穏やかになった。

次の日の朝、病院に行く直前、熱が出て、血圧が下がっていると連絡が入った。祖母は既に目も開けることができなかったが、手を握りながら話しかけると指がピクピクと動き、またうめき声を発し、明らかに聞こえているようだった。そしてとても苦しそうに息をしていたのが、家族の声に反応するように、表情が穏やかになった。

時折、看護婦さんがバイタルサインをチェックする。血中酸素濃度は指先に機械を当て直ぐに測れ、90%以上の正常な値だという。血液中酸素が正常ならば脳に酸素が供給されているわけで、人は臨終の際でも意識があり、聞こえているのだと確信した。あとになって考えれば祖母の好きな音楽などを流せばよかったと思う。

胸以外の上半身を使って呼吸する努力呼吸(Labored breathing)から、顎がだけが動く死戦期呼吸(Agonal respiration)に移る際、目を開くこともできないほど衰弱していた祖母が、最後に大く目を見開いたので驚き、「おばあちゃん、おばあちゃん」と叫びなら手をにぎるとの今度は目の色が真っ黒だった。後になって考えると、瞳孔が開いていたのだろう。瞳孔が開けば光が多く目に入る。ハリーポッタの最終回にも、ハリーが死ぬ際、光に包まれ真っ白い世界でダンブルドアと出会う場面があったが、本当にあるのだと思った。

その時は死戦期呼吸の意味を知らず、逆にあまり苦しそうに見えなかったので、戻る飛行機のため何時に病院を離れるかを考えていたら、祖母の喉から「ゴロゴロゴロ」という音が鳴り(死前喘鳴)、そのあと心肺機能停止を迎えた。自分が病院を離れる20分ぐらい前であった。

最後まで人に感謝し、問いかけに対して答えようとする意思を見せ続けた93歳での臨終であった。骨折や膀胱の手術の為、痛みを常に訴えていたが、最後には家族の問いかけに対して穏やかな表情を見せてくれたおかげで、死の恐怖が自分の中で少し柔らいたと思う。