Get Things Right

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 北京、泰山、曲阜、済南、天津 その2

北京の紫禁城は権力を感じさせる場所だ。皇帝の部屋は意外に小さく、壁には「惟以一人治天下」と書かれた掛軸があった。「惟一人を以って、天下を治める」と自分は読んだ。

一つのものを、二人が欲する。だから争う。争いをなくすことはできない。なぜなら地位、名誉など目に見えないものから、土地や愛する異性など目にすることができるものまで、世の中には共有できない唯一のもの・ことが数知れないから。その一つが「天下」や「世界の中心」という概念。過去、現在、そして未来永劫、人間は他人との争にさらされる。小さなおもちゃを取り合う兄弟の喧嘩から、唯一の正義をめぐって争う国家間の戦争まで。

人はこの単純な現実から目を逸らすことができる。実際、日本は戦後そうしてきた。現実ではなく、理想から出発する思索は、前提が単純なだけ推論が重ねやすく、容易に世界政府、ユートピアなど楽しく、且つ完全な世界を結論とすることができるため、心地よくもある。

儒教は「忠、孝」を推奨し、君主、年上に従うことを正義とした。古代インドの宰相、チャーナキヤは身分制度を細かく設定し、序列を確立した。序列があれば、「唯一のもの」が争いを介さず、自動的に配分できる。現在の市場資本主義も配分・分配システムだ。最も多くのお金を払う意思のある人に(争いを介さず)配分されていく。自分は資本主義が身分制度などより優れている配分システムだと考える。問題は「お金を生む」ものも、お金で買うため金持ちはよりお金持ちになりやすいこと。

逆説的だが「唯一のもの」があるから、争いが起こる。そして争いが起こるから「唯一のもの」を必要とする。それは唯一の権威。最終的には「決め」である正義を確立するもの。唯一の権威がなく、配分のための事前取り決めがなければ、当事者間での争いが事を決する。当事者間の争いを避けるための「唯一の権威」がなければならない。問題はその「唯一の権威」をどう配分し、誰がなるかだ。この問題は循環している。