Get Things Right

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ブッダ

死期を目前とし、人生はなんと美しく、甘美だとブッダは語った。彼は王族の生活と妻子を捨て、死ぬ寸前まで苦行をし、故郷の釈迦族は、彼がよく知る人々によって、滅ぼされるという運命を目のあたりとした。それなのに、何を以ってして「人生は甘美」というのか。自分は真理を見つけ、広めたという達成感だと考える。この世に戻ってきても意味がないと思えるほどの。

ブッダが生まれた頃インドは、商業が勃興し、小さな国々は大きな国々に飲み込まれる過程であり、思想的にも無神論から唯心論まで、乱立している時代。ブッダバラモンを頂点とする階級社会を、言葉によって変革した。

具体的には以下のように言葉を変えた: 
<言葉>=<意味>:<実際>
バラモン=エライ人:良い生まれの人(以前)
バラモン=エライ人:良い行為をする人(以後)

ヴェーダ=知恵:書物、儀式   (以前) 
ヴェーダ=知恵:人間の真理、因果(以後)

ブッダは新しい言葉を導入するのではなく、既存の言葉を、より本質的な意味に変えた。結果、人々の心を変え、社会が変わり、仏教はアショーカ王時代で隆盛を極めた。バラモン教は生き残るため、民間宗教を取り入れ、すべての階級に受け入れられるよう、変革を迫られた。

ブッダが述べた人間の真理の抜粋、要約として:
1)幸せや苦しみの強さは、執着の強さに依存する
2)幸せや苦しみの感情には、フィードバックが存在する
3)2)は自我を形成する要因となっており、1)4)に影響する
4)3)は視点を固定し、自分や物事に囚われたりし、気付ける範囲を規定する要因となり、1)2)3)に影響する
5)世界に永遠のものはなく、人間も例外ではない。1)−6)に影響
6)5)は永遠の法である。1)−6)に影響  

ブッダ自身が、説法をするのを躊躇うほど、複雑な相互作用を伴う仕組み。ブッダによる最初の説法を初転法輪といい、広大な事象の因果関係を俯瞰的に、直感的に見える人によって、輪を回し続けなければ、消えてく運命にある。もしくは、 仏典を崇めましょう、念仏を唱えましょうと、単純化しなければ、残っていくものではない。

仏教がインドから消え、玄奘三蔵がインドまで行って勉強し、既に訳されている仏典を再度、漢訳しなおしたり、日本語には訳されなかったのは真理の難しさに原因があるのではないか。その中で昭和に入り、中村元教授が初期仏典を現代日本語に翻訳し、辞書まで作成した彼の学問的業績は、日本版玄奘三蔵といえると思う。ブッダ玄奘三蔵中村元などの天才によって回される真理の輪。 神ではなく法と自身に頼れと語ったブッダは、現在最も世界中で神として崇められている人間の一人である。

参考
ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)
ブッダの真理のことば・感興のことば (岩波文庫)
ブッダの人と思想 (NHKブックス)
釈尊の生涯 (平凡社ライブラリー)
ブッダ神々との対話―サンユッタ・ニカーヤ1 (岩波文庫 青 329-1)
仏弟子の告白―テーラガーター (岩波文庫 青 327-1)
ブッダ神々との対話―サンユッタ・ニカーヤ1 (岩波文庫 青 329-1)
天竺への道