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 決済とは What is Settlement? -> resolve the relationship of debt and credit

2005年12月8日 みずほ証券ジェイコム株式の上場初日において誤って存在する株式の数以上の発注、約定したいわゆるジェイコム株大量誤発注事件を覚えているだろうか。

なぜ存在しないジェイコム株が売買でき、それが決済されるのだろうか?

結論を言えば①東証の売買システムには流通株式数と日々の売買の整合性をチェックするロジックがなかったから。②そして東証に接続している会社はクレディット(信用)で売買しているからである。

②の信用で売買とは東証に対して売買発注データを送信する際、実際に自分のところに買う場合は資金、売る場合は株式があるかどうかを確認せずとも東証で売買ができるという意味である。だから実際に約定したとしてもお金、株式がないということがありえる。実際に株式を売った側が買った側に引き渡せない場合は決済のフェイル(fail)と呼ばれる。

ここで理解すべき重要な点は、東証の売買システムは株式の需要者と供給者が同一の価格で売買に合意したことを第三者として認証し、供給者には株式に引き渡し義務を、需要者には代金の支払い義務を負わせる機能を担っているあるいうことだ。言い換えれば東証の売買システムは債務者、債権者の関係をデータとして生成、記録するシステムといえる。

決済とはその債務者、債権者の関係を解消し債務と債権を消滅させることである。みずほ証券東証の売買システムで生成された債務と債権の関係を解消するため、多額の現金の支払いを余儀なくされた。

クレディット(信用)で売買できる効用としては株価が安すぎる場合は買い注文、高すぎる場合は売り注文と手もの資金、在庫を確認せずとも迅速に売買注文を東証に投げることがあげられる。結果として裁定取引が履行しやすい市場環境が形成され、株価が迅速に適正な価格に戻ることが期待される。しかし適正な価格とは主観的な観点であり実際には投機、市場のボラタリティを高めるために利用されている可能性も否定できない。

クレディット(信用)に基づいて生成された債務、債権の関係を滞りなく解消(決済)するためには株式貸借市場が不可欠だ。持っていない株式を引き渡すため日本証券金融などから株式を借り決済する。売買の決済は期日が決まっているが貸借取引の場合、借りる期間を延長する(roll over)という仕組みが備わっているため、その分だけ決済に対して自由度があるといえる。

Reference:
決済システムをデザインする―基礎理論から電子マネーまで (金融職人技シリーズ)