Get Things Right

My English blog is here http://getthingsright.blogspot.com/

 長期・短期資金調達のインフラ (アジア通貨危機を踏まえて) The infrastructure to prevent Asian crisis, e.g. market for long-term bond finance, currency swap agreement between two countries

大学生時代のときだ。大学の授業が本格的に始まる前にその年の学費を納めなければならないのだが、その年はアジア通貨危機があった年。マレーシアが外貨送金を禁止したためマレーシアの友人は学費を払えない。大学側が学費納入の期限を延長して事なきを得たが、「ジョージソロス」という言葉を友人は何度も口にしていたのを覚えている。(そのとき彼の顔は引きつっていた。。。)

当時はソロス率いるヘッジファンドが為替投機的な仕掛け通貨が暴落、結果資金が国外へ逃亡し金融危機、ひいては経済危機を引き起こしたと考えていた。アジアの国々は被害者であり、ヘッジファンドが加害者という二元論(dichotomy)という視点だ。

だが経済や金融についての理解が蓄積してきた現在は異なる視点を持っている。

資金が国外へ逃亡するとは融資されていた資金を返済することを要求され、返済された資金が海外の口座に送金された結果、その国の経済活動に使われていた資金量が縮小したということだ。融資業務は融資契約に基づいて融資が実行され、契約に基づいて資金が返却される。通常、返済請求権は銀行側にあることが契約書に明記されている。だから企業の資金繰りを銀行の融資に頼るということはその企業の命運を企業に預けているのと同じことだ。銀行融資は短期の資金繰りのためといわれる所以である。

もし企業活動の資金が株式で賄われていたとしたらどうだろうか。たとえ株式市場で株価が暴落したとしても企業は株式発行時点で調達資金額は確定している。株式発行は銀行融資よりも企業側にとって安全な資金調達の手段といえる。社債も同様だ。満期が明記されているため満期まで資金は返済しなくてよいことが確定している。社債、株式は長期の資金調達といわれている。

つまるところ通貨危機が引き金となって企業活動が阻害されるほどの資金が流出したといことは銀行融資等の短期資金にその国の経済が過度に依存していたということだ。アジア経済危機の再発を避けるためには企業が長期・短期資金のニーズによって様々な手段で資金調達ができる金融市場の懐の厚みが重要になる。

だが株式・社債市場等、企業活動の長期ファイナンスを担う社会インフラをその国の経済に組み込むことは難しい。長期ファイナンスとは資金の出し手の立場からしてみれば長期に自分の資金を他者に預けておくことにほかならない。十分な金融知識が資金の出し手に備わり、そして判断を下すのに必要な情報が潤沢に提供されなければ資金の出し手は資金を提供できない。必要となる金融知識、リスクの概念、情報収集そして論理的思考に上になりたつ判断力。どれも究極的には個々人の教育問題と帰着する。