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  経済学事始 其の二  権威の後光

「経済学は自然科学ではない。社会科学だ。だから絶対正しいなどということはない。誰もが自由に意見を述べることができる。」
イギリスの大学で聞いた言葉。「衝撃」だった。
経済学は自然科学における「自然」のような絶対的な規範を持っていない。だからなに正しく、正しくないか。学問に対する国の文化、価値観が反映される。
「俺、マル経からしらないよ」。「私は偉大な経済学者○○と同席したことがある。幸せだ。彼は高齢だが息をしているだけでも存在感がある」。「この式を偏微分するとこの項が残る。だからケインズ政策は正しい」。日本の大学にいたときに聴いた言葉だ。これらの言葉が下地となって、イギリスの教授が「権威」いう後光を自ら否定するような言葉を発したとき「衝撃」を受けたのだと思う。

先日インド人の同僚がMBAを非常に優秀な成績で卒業したため昼休に社内で祝った。インド人は概してよく勉強する。彼と企業戦略・コーポレートファイナンスについて話すと彼は「教授が言っていたから」。「著名な論文に書いてあったから」という類の言葉をよく発する。自然法則ならいざ知らず、成功する会社のありようについての根拠が「論文に書いてあったから」では心もとない。

インドも日本も「権威の後光」に目がくらみやすいのは文化的背景に起因する。学問が文化と切り離して考えられないことを示す良い一例だと思う。