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オバマ新大統領の就任演説とリーダとしての資質

「あれ?期待はずれ」。最初そう思った。何を期待していたかといえば「Yes, we can」とか「No black America, No white America, the United States of America!!!」など韻を踏み、まるでラップミュージックを聞くような盛り上がり。「I have a dream」スピーチを想起させ聴衆の熱狂的な盛り上がりとともに作り出される一体感。いつもどおり雄弁なスピーチだったが選挙キャンペーンのものとは明らかに一線を画す。テレビのコメンテーターは前大統領に対する敬意から始まり、アメリカの価値観、愛国心を語るなど大統領の就任演説らしい演説という。大統領の就任演説には決まった型があるのだろう。そしてそれを踏襲し歴史を刻んでいく米国は「歴史を造る」ことに意識的だ。それが偉大な政治家が生まれる土壌となる。民衆に歴史を意識させる偉大な政治家の。

選挙前は無名だったオバマ氏が民主的な手続きの結果大統領に指名された。彼にはカリスマがある。多くの民衆に影響を与え支持を取り付ける。なにが彼にカリスマを与えるのだろうか。頭のよさ?ハンサムな外見?雄弁な弁論術?響きの良い声?努力?

時代の要請も確かにあるだろう。二つの地域で泥沼の戦争を抱え、そのうえ経済が急激に悪化しているアメリカ合衆国。「change!」を雄弁に掲げ、以前より戦争に反対の立場を取っていたオバマ氏の言葉は「変化」を求める民衆の心に強く響く。カリスマは人々に求める心がなければ存在しない。

その上で自分はオバマ氏自身の資質として「融和(reconciliation)」をあげたい。

たとえ話をしよう。生まれながらに異なる環境を前にして、ある貧しい黒人が白人に対して子供のとき劣等感、もしくは怒りを感じる。その黒人はそれをバネに努力をしてお金持ちになる。これはこれでよい話だ。彼は努力・能力により境遇に打勝つ話。この黒人は「打勝つ」ことで問題を解決する。

もう一つは、やはり人種等生まれながらの境遇の違いを前にして怒りを感じる黒人がいるとする。すると彼はその怒りの原因となっている境遇の違いについて考察し、境遇の違いは白人社会の中でも存在すると気づく。そして人種という枠にとらわれず社会全体の問題として問題を再定義する。結果その問題提起は境遇に関らず社会全体が共感できる普遍性を持ち、解決への道筋はみんなが共感できる「理想」となる。

後者が「オバマ新大統領」のカリスマのイメージ。彼は頭いい。その上で自分と異なる人とも共感を分ち合える「理想」を掲げることができる。
日本にも頭の良い人はたくさんいる。日本語のブログで他人の間違いを鋭い論理で論破(打ちのめす)するのはよく目にする。しかし他者に共感を表明し、自他ともに共感できる「理想/問題提起」を目にすることは少ない。リーダの資質を育む土壌がないからか。

いくつかオバマ氏のスピーチを見たが「A More Perfect Union」は秀逸。歴史に残るスピーチならこれではないかと思う。オバマ新大統領のリーダとしての資質「融和(reconciliation)」が一番強く感じ取れるスピーチだ。

http://www.youtube.com/watch?v=pWe7wTVbLUU