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新約聖書 その一 事始め

エスが生きていた時代、ユダヤ人はローマ人という強大な力を持つ異教徒の支配下にあった。民族に栄光を与えるはずの神は、ユダヤ民族が支配されている現実を前に動かない。神が動くには条件が満たされる必要があり、その条件とは何であり、また神は誰を救済の対象とするのか。

議論は分かれていたが、その一つに律法を守ることを条件とする派があった。例えば安息日の厳守。安息日には食事をつくることも労働となり避けなければならない。ちなみに現在でもエレベータのボタンを押すことも労働となるため、全ての階に泊まる安息日用のエレベータがあるという。労働を避けるのは簡単。他人に働いてもらえば良い 。そして同じユダヤ人の中でも救われるものを、救われないものの区別がつく。

救済の対象を巡って人が分けられる。イエスは形式に囚われずに、隣人愛という概念を通して、救済の対象の定義を大きく書きなおした。そのことがユダヤ人という民族の枠を大きく超え、神の御心に適う事こそ大事とし、世界宗教の礎となった。イエスの起こした数々の奇跡は、定義を書き換えたことの正当性を強く主張する。

例えを用い「聖書の本当の意味は」、「神の本当の意思は」と民衆に強く支持される形で、新しい定義を主張したイエスは歴史上最大の改革者であろう。律法を守ることが大事だとすると一見フェアなことに見えるが、実際の行動には財力が必要となれば、特定の集団のみが救済の対象となる。そして財力は時代を問わず、権力(ローマ帝国やシステム)に癒着しているものが手にしやすい。

エスの数年における布教活動の後、キリスト教世界宗教になるには、さらなる発展があったのだが、イエスが蒔いた種は大きく歴史に影響をもたらし、いまなおその影響力には強いものがある。