沖縄 其の三 文化
那覇市ではあまり、アメリカを感じなかったが、北谷(チャタン)でビーチやレストランに入ると多くの米国人がいた。軍人だけでなくその家族たち。軍人たちは筋骨隆々としており、ジョギングで礼儀正しく日本語で「すみません」と通り過ぎて行く。チャタンのサンセットビーチは欧米人が訪れるからか、質の良いリゾート地となっていた。
ホテルには米軍の英字新聞・雑誌が置いてあり、紙面では軍人が沖縄の学校にボランティアで英語を教えている活動が紹介されていた。Helloと声をかけてくる礼儀正しい軍人など、彼らなりに地元に受け入れられるように努力しているのだろう。最終的には彼ら一人一人が、沖縄に愛着を持たなければ、戦争なった際に、違いが出るのではないだろうか。またこんなに米国人比率が高い沖縄は、知恵を絞れば英語と日本語のバイリンガル教育が、日本で唯一県単位で可能だと思う。結果優れた外交官などを沖縄から輩出するのではないだろうか。空軍や海軍の組織内で上を目指そうというアメリカ人に対して、リーダシップ論、コミニケーション論、組織論などのトピックについて、大学入学前に論争できるような人材を目指して、シンガポールみたいに幼児から教育を始めれば 。
中国文化の影響と言えば「石敢當」。台湾のイーランでは人に聴きまくり、探しまわって1つ見つけたが、沖縄ではたくさん見かけた。イーランでは石敢當がガイドブックに書いている鬼の彫刻の形と違い、ただの新しい石に「石敢當」と書いてあったのでアレっと思ったが、そのスタイルは沖縄のものと同じだった。すでに台湾では石敢當は消滅寸前であり、沖縄のスタイルが台湾に逆輸入されたのでは。
お茶屋さんに「茶行」と「行」をつけたり、ケーキに台湾の「鳳梨酥」と同じように「酥」の字を使ってたりと、中国語圏に住んでいなければ気付かないことに目が行く。沖縄はサンゴ礁の島であり、大陸中国人が台湾で一番、高値でお土産 として購入していくのが珊瑚なのに、珊瑚を売っている土産物店を見なかった。沖縄は珊瑚を保護してるのだろう。
スーパーでは豚も魚もほとんど地の物を見なかった。お肉もニュージランドやブラジル産。値段も東京都変わらないと思った。地の物が並ぶ台湾とは大きく異なる。沖縄は珊瑚の島で、自給自足率が低いのだろうか。台湾に戻ってスーパーで沖縄の物を探したが見つからない。経済的に沖縄、台湾は依存関係にないのだろう。島内の移動は公共バスを使ったが、その料金の高さに驚いた。本土から補助金が出ているのなら、野球場の建設などではなく、より経済効果のある道路、鉄道などの交通網、そしてビジネスセンターや太陽・風力発電などに使えばよいと思った。また142万の人口なら那覇市長と沖縄知事と分けるより、1つにまとめたほうがより効果的な施策が打ち出されると思う。
最後に、地元の新聞は一面に、普天間の基地問題について連日報道していた。鳩山前首相が「Trust Me」といっていた案件としか認識していなかったが、沖縄にとっては大きな問題だと認識を新たにする。沖縄と本土の認識の違いは、第二次世界大戦で、本土の人が戦場となった沖縄の経験を理解できないのと同様に、日本人が自国を戦場とされた中国を理解できない構図に似ている。空襲も悲惨だが、敵国の兵士が踏み込んでくる戦場の経験は、更に悲惨で想像を超えるもの。沖縄を理解できない日本が、中国を理解できないのもむしろ当然といえるだろう。この事は理解は知識だけで得られるものでなく、経験を通してのみ、得られる理解もあることを示唆しているのではないか。
同様のことは仏教の「悟り」にも言える。知識としては語り尽くされている感のある「悟り」だが、それを得、理解するには経験が必要だ。「悟り」は単なる知識の理解ではなく、視点の変化、自己のアイデンティティを変化を伴う理解なのだろう。本土はアイデンティティ変えずに、もしくは左翼的な人間を製造せずに、沖縄を理解するには、歴史の相対化を組み入れた、より上質な歴史教育を実施する必要がある。また相対化された歴史教育が近隣諸国にも広がれば、お互いに異なる視点があり得ることを認め合うことになり、それこそ歴史認識の問題に終止符を打つことができるのではないだろうか。
最悪なのは、経験していないのだから、理解できないのは当然だろうと、正論ぶって語ってはならない。理解できないと言われた方は、人間の限界を悟る前に、自分は大事にされていない、もしくは相手の努力・誠意がたりないと思うのだから(自分は理解しているから)。態度だけでも、理解をするという真摯な態度を保ちつつ、相対化された視点を歴史の中に戦略的に組み込むのが、自国・他国にとって最善だと考える。
参考:
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E6%95%A2%E7%95%B6
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