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 シンガポール 建国50周年 其の二

建国50年は、リー・クワンユーの死去を含め、後世シンガポールのターニングポイントとみられるだろう。シンガポールの発展が続くか否かは、政治と大きく関わっている。シンガポール華人が現在74% 占め、常に圧倒的多数である。以前の華人は出身ごとに言語が異なっていたが、現在は華人として一つにまとまっている。シンガポールの政治は常に圧倒的多数である華人がどうやって盲目的な愛国的態度(chauvinistic)を抑え、マレー人やインド人も中華系と対等なシンガポール人とすることであった。だからこそ、シンガポール宣誓文はことさら人種・宗教間の平等を歌っている。

元来、華人の教育は1911年の辛亥革命の影響のもと、中華回復を掲げ、愛国心を煽るものであった。結果、戦後日本統治の後、マレー半島で最も熱狂的に共産革命を目指し、熾烈な政治闘争を担ったのは華人あった。華人は世界一難しいと言われる漢字、5000年もの悠久の歴史を誇る文明を学ぶことにより、たとえ貧しくとも、日本語で俗に言う「武士は食わねど高楊枝」と観念的に、自己に対する肯定感をもち、それに伴う現実とのギャップを行動力に変える方法論持っていた。だからこそ、明らかに英語の方がシンガポール・マレーシアにおいて役に立つ言語でも、激しく英語教育に抗ったのだと思う。

圧倒的多数の華人が中華系としてのエゴを抑えて、マレー、インド系の立場と感情を理解し、マイノリティを軽視する政策を将来にわたって 避け続けることが出来るかどうかは、シンガポールの試金石となる。リー・クワンユーという強力なリーダー亡き後、民主主義の手続きを経て、なおかつ華人・マレー・インド系がお互いのエゴを抑えて、同胞として見なし続けることができるか。長期的にはシンガポールの存続はアイデンティティの問題と深く関わっている。

華人のエゴをどう抑えるか。中華思想は文字通り 、平等の思想ではなく「華人は優秀だ」、「華人の文明は優れている 」のように、個人のエゴを支える道具。孫文キリスト教徒だから平等の思想に触れていたが、辛亥革命以前は、どうやって西洋列強の侵略を防ぎ、中国を強くするかが主眼であり、中華優位の思想には道理があった。また漢字の複雑さは学習に時間がかかるほど、見返りを求める形で、エゴが強まり価値と優位を肯定する心理を作り出す。

現首相のリー・シェンロンもエゴを抑制する大切さと、シンガポールアイデンティティ問題に気づいている。現在、強制的に人口分布を管理して、人種間の交わりを進めている。それを保持しつつ、その他に自分は2つの方法論があると思う。

一つ目は神話の作成。シンガポールでローカル校にかよっている子が「マーライオンは本当にシンガポール川にいるのだよ。ただ、見つけようと思って潜ると隠れるのだ」と言った。それを拡張し、シンガポールにおける人種、宗教観の平等は、マーライオンなどの神性を帯びているものから、ア・プリオリ(a priori、先験的)にシンガポール人に与えられたものとし、平等概念を全国民で子供の頃から神話として共有する。300年経ったらリー・クワンユーも神話に登場させてもいい。

二つ目は危機感の共有。シンガポールは水の問題の解決、軍備は域内でずば抜けて近代的とひとつひとつ、シンガポール存続の問題を解決したことを誇ってきた。そのことは素晴らしいことだが、危機感を持つ要素を1つずつ減らしていくような政府の宣伝は、長期的にはネガティブな影響を持つ。メリトクラシーの推進は、妥協したら存続が危ぶまれるという危機感が、健全な運営の基礎となるからだ。

今後、シンガポールは中国の影響力が増すなか、難しい舵取りを迫られる。折にふれて現れるタイのクラ海峡運河建設の話は、中国がシンガポールに対して、米国海軍の港使用を禁止する圧力となりえる。中国の圧力に屈して、中国寄りの政策を取れば、それが人種間の軋轢まで発展する可能性がある。国内にも外圧を内政に利用しようとするグループが現れても可怪しくない。

シンガポール建国はマレー人の国家か否かの問題でなされた。シンガポールの存続は、華人の国家か否かの問題に集約されていくのではと予測する。そしてこの問題はシンガポールが国として歴史を重ね、シンガポールの歴史のみで人間の根源に関わるモラルストーリーが出揃ったり、東南アジアの発展に多大な寄与をし、東南アジアの盟主と誇れる事例が多くなることで解決していくと考える。

参考:
http://www.singstat.gov.sg/docs/default-source/default-document-library/publications/publications_and_papers/reference/monthly_digest/mdsjul15.pdf
https://en.wikipedia.org/wiki/Singapore_National_Pledge
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E5%9C%B0%E5%B3%A1