海の時代から陸の時代へ
世界地図を見ると、中国>カザフスタン>ウクライナ>ポーランド>ドイツと中国とドイツの間にある国の数はそれほど多くない。古来モンゴル帝国がこの地域をチンギス・カンが一代で一つにまとめたように、中国からドイツまでは平原で続いており、馬での往来も可能である。近年、中国は新シルクロードと称して、欧米までの陸路の拡充を進めている。現在、渝新欧鉄道(新ユ−ラシア・ランドブリッジ、11000km)と呼ばれている大陸横断鉄道も走り、40日かかっていた海路を13日にまで短縮し、コストの面でも競争力を持つという。
第二次世界大戦前までは、日本の大都市の駅で、ヨーロッパまでの鉄道の切符が買えた。日本の国内列車と船便を含め、シベリア鉄道を経由してヨーロッパに入るのは、航空便が出来るまで最速の輸送手段であった。明らかに陸路の方が、インドやシンガポール海峡を経由する海路より短く(アムステルダム、スエズ運河経由上海、19484km)コストも安いとするならば、ヨーロッパ、アジア間の物流の流れは、海路から陸路へと大きく揺り動くことになる。またそのことが実現されたらば、中国はアジアにおいて、地政学的に大きな力を得ることになる。
中国が、アジア開発銀行ではなく、独自の新開発銀行を設立して、融資の第一要件をインフラ計画 とすることや、APECのような国際的枠組み、上海協力機構を設立して、ロシア、カザフスタンなどユーラシア大陸に新しい政治協力体制を構築するのも、最終的には15世紀、ヨーロッパによって始まった大航海時代の海路の時代から、陸路の時代への回帰を促す 。
つい最近、ミャンマーの銀行免許を邦銀3行、シンガポール2行を含む、6カ国9銀行に営業権を交付したのも、ミャンマーは中国とインドの陸路が開ければ、場所的に通過せざる得ない場所にあり、銀行によっては地政学的利点を理解した上で先手を打っている。
このユーラシア大陸での陸路の回帰による利益に最も縁遠い国が、英国と米国(あとシンガポール)。麻生太郎元首相が、外務省時代に「自由と繁栄の弧」を打ち出したことは、英国・米国が管理し既得権を持つ、従来のスエズ運河を経由する海路を重視する政策であり、英国・米国の地政学的戦略とも適う。中国からするとウズベキスタンや、アフガニスタンなど、中央アジアの国々を不安化させるのは英米であり、陸路の拡充に不可欠な中央アジアの平和を脅かす存在と映る。だからこそ、中国は利益相反する英米がアジアから撤退し、自分でアジアを管理したいと考え、日本の従属外交を非難する。
自分は 20000Kmの海路と11000Kmの陸路を比べれば、陸路の強みは明らかだと考える。中央アジアの国々が政治的に安定し、経済成長を志向すれば中国が提案する枠組みは、繁栄をもたらすWinWinのもの。先月のAPECでもいくつかの国は期待を表明していた。長期的には海路の時代から、陸路の時代へと地政学的パラダイムシフトがおき、そのことは中国や中央アジアの国々に大きな繁栄のチャンスを与えると考える。そして自国で自身の利益に適う独自の地政学的な戦略を持たない国々は、利益が相反する主要各国の闘争の駒として使われる可能性があると考える。
参照
http://blogs.itmedia.co.jp/serial/2011/02/it-e38b.html
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42007
http://jp.cq.gov.cn/chongqingtoday/News/2014/7/31/1327753.shtml
http://globalization-research.jp/gri_report_5.pdf
http://shimamyuko.wordpress.com/2013/05/10/%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E5%88%9D%E3%81%AE%E5%A4%A7%E9%99%B8%E6%A8%AA%E6%96%AD%E9%89%84%E9%81%93%E3%81%8C%E5%AE%8C%E6%88%90%E3%81%97%E3%81%9F%E6%97%A5/
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=00104885&TYPE=HTML_FILE&POS=1&TOP_METAID=00104885
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E9%96%8B%E7%99%BA%E9%8A%80%E8%A1%8C
http://okwave.jp/qa/q2048651.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%88%AA%E6%B5%B7%E6%99%82%E4%BB%A3
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF01H18_R01C14A0EE8000/
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/free_pros/pdfs/shiryo_01.pdf