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国家の永続性を支える柱としての貸借対照表

ローンを借りている顧客から、返済金1500円の入金があった。銀行ではそれを会計処理上、1000円を元本の返済、500円を利子の返済と分けて計上する。なぜ元本と利息金額を分けて取り扱うのだろう。お金に色があるわけではあるまいし。それに貸出残高は別途、ローン取引明細書で管理しているのに。

いくつか会計の本を読み進めていくうちに、別途管理することが、主体存亡にかかわる非常に重要なことだと理解した。上記の例では、1500円の入金のうち、1000円の元本返済は、別途管理し、新しいローンとして貸し出さなければ銀行の将来の収益源が途絶えてしまう。500円の利子の部分は利益として計上しなければ、銀行の財務諸表に利益は計上されず、株価に影響を与える。前者は銀行の長期にわたる永続性に関わる問題であり、後者は株価、配当という短期的な利害に直結する。

会社、そして個人、国家も含め長期的に存続するためには、現在における収入、支出は将来の収入、支出に影響を受けなければならない。将来、支出の増大が予期されるなら、現在の支出を抑えて、将来のために蓄える。現在、支出を増やすならば、将来において収入の増大が確保するなど。

現在と未来に折り合いを付けながら、現在と未来のお金を更なる未来のために積み立てて、企業の永続性を図る仕組みが現在の会計にはある。それが「費用の資産化」、「引当金」。会社の資金源である、商品を生み出す工場が10年しか持たなければ、10年後に備えて工場の建替費を別途管理して積み立てる。退職者が企業年金を受けると分かっている場合は、前もって積み立てておく。利益として計上してしまうと税金、配当として会社の外にお金が流れてしまい、支出の時期が来たときに会社の永続性が脅かされる。

よく「国家は永続だから、いくらでも借金しても問題ない」という議論を聞く。確かに国には徴税権があり、国債が国内で消化されている限り、国債保有税100%を課税すれば、一気に国の借金はなくなる。だがこのような横暴は長期的に「国家の永続性」を脅かすこととなる。

この種の議論「国家は永続」という前提において、国家に永続性をもたらすための条件についての考察が抜けているのは残念。変化が常である世において「永続」をアプリオリにおくことになんら疑問をもてない人が学者、識者として名が通っている社会は、永続性に欠けている。

将来において歳出の増大が予期されているのに、入ってきた歳入をすべて、単年度で使い切る仕組みしかない、現在の国家財政の仕組みは永続性に欠けている。早急に:1)将来に予期される歳出増大の額とその内訳、そして準備金積み立ての仕組み、前提となる将来の税収額と、国債発行の際の利子率を含めた形で、単年度の予算を議論する財政の構築。(貸借対照表で考える財政) 2)特別会計の一般会計化。3)財政学者の会計トレーニング。永続性をもたらす仕分けの構築。を実施し、国家に永続性を組み込むべきだ。

参考文献
会計発達史
会計の時代だ―会計と会計士との歴史 (ちくま新書)
借金を返すと儲かるのか?
会計のルールはこの3つしかない (新書y)