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二人の李氏 李登輝とリー・クァンユー(李光耀)

客家の原像という新書によれば、彼らの源流は客家にある。李氏の族譜は中国古代の五帝の一人、少昊の後裔の理征にさかのぼる。理征は司法を担当していたが、裁判で手心を加えることを拒んだために殺され、妻は追われる身となり、すもも(李)を食べて生きながらえた。そのため、すももに感謝して、理から李に名を変えた。宋代になりモンゴルの南進を避け福建省に移り、李火徳の三男李坤培の子孫李崇文が1686年、台湾に渡りそれから4代目が李登輝。李坤培の子供が広東省梅州に入り、大埔県大麻塘渓郷に移り住んだ。これがリー・クァンユー一族。リー・クァンユーの祖父李進坤がシンガポールに移り住み、ジャワ島の砂糖王黃中涵の運輸関連で働き後に、代理権を取得、貿易で財を成した。 父は石油企業SHELLで働き英語を話し、比較的裕福な家庭でリー・クァンユーは育った。両者とも客家を源流としているが、共に客家語は喋れず、リー・クァンユーの場合はプラナカン(マレーシア半島に住む華僑)と呼ばれている。

両者の著作を読むと、偉大な指導者の原像が見えてくる。李登輝は台湾人を創り、リー・クァンユーはシンガポール人を創った。偉大なリーダーは新しい民族を創りだす。生き残るために。

李登輝は2・26事件以降、戒厳令下にあった台湾を、三民主義という孫文の理想を使い、民主主義国家を実現し、経済は大躍進した。リー・クァンユーはシンガポール建国に携わり、シンガポールは世界でも有数な豊かな国にした。二人とも国家と民族は人工的なものであり、指導者によって存続したり消滅したりすることだというのを理解している。

李登輝が言及した「モーゼの出エジプト」は種種雑多な奴隷たちが、世代をまたがって辛抱強く、カナンの土地を攻略という難題を克服し、新しい民族と国家を打ち立てる話。先日、台湾で学生が国会を占拠したが、大多数の台湾人が中国への併合が避けられない運命のように感じているなか、台湾人としての自立と国民性を守るためにまだできることがあると、多くの台湾人の目を開かせた。これは李登輝が民主主義の種を台湾に植えたことと無関係ではないと思う。

スコットランドの独立選挙を見ても、国家は国民の意志と選挙という手続きを通して、独立できるのが現在の国際ルール。このことを偽善、虚偽、圧政そして武力によって覆すのが現代の帝国主義李登輝はその帝国主義から逃れる手段として新しいアイデンティティの確立を考えていたと自分は見ている。

リー・クァンユーはイスラム教が食べ物への決まりが、 実はイスラム教徒のコミニティーを分け、宗教を通して集団アイデンティティの確立の為の方便と鋭く見抜く。それは「飢えに際して、もし最後の一袋の穀物が残ったなら、だれと分けるか」という問にも現れる。生きるか死ぬかという極限での人間の選択を、どうしたら国民がシンガポール人を一つの民族として見なし、国家を守るために戦う精神を養えるのかという課題を常に考えきた。Green and Clean政策も国家全体が清潔でなければ、衛生的な場所に住む豊かな層と、汚い場所に住む貧しい層に国民が分断され、徴兵制に影響する。国民に住宅を与え人種が交わるようにしたり、英語を共通語にしたり、汚職を厳しく排し能力に依って人材を登用する政策も、そうでなければ一つの民族としてのシンガポール人を創造できないから。彼はまだシンガポール人は一つの民族へと移行する過渡期にあるという。それは200年以上たったアメリカも同様。彼は何世代も後のことも視野に入れている。国家や民族を創造するとは世代を超える長期事業。彼自信もシンガポール人が長き未来に渡って存続するかは知らない 。ただ存続する為の条件を明らかにしている。それは「優秀なリーダーを持ち、傑出した集団であること」。自然とモーゼによって創られたユダヤ人と結論が重なっている。

先月チェコプラハを訪れた際、韓国人、中国人、台湾人、日本人、インド人、マレー人など様々な国からの観光客を見かけた。その中でひときわ目を引く集団がいた。大学生ぐらいの若い女性たちでインド人、マレー人、中国人が一緒に仲良くはしゃいでいたので驚いた。近くを通り過ぎる際、彼らが一様にシンガポール人英語を話すのを聞いて、納得がいくのと同時に人種の融合に感動した。彼女たちにはそれが自然であっても、実はそれは卓越したリーダーが創りだした奇跡。プラハで改めてリー・クァンユーの偉大さを知る。

Quote ”Nationhood is an artificial creation, it’s an artefact of how you divide peoples of different races into countries that govern themselves ”Unquote, from Lee Kwan Yew, Hard Truths

参考

アジアの世紀の鍵を握る客家の原像―その源流・文化・人物 (中公新書)

アジアの世紀の鍵を握る客家の原像―その源流・文化・人物 (中公新書)

Lee Kwan Yew, Hard Truths
これからのアジア (カッパ・ブックス)

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台湾の主張

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台湾の命運―最も親日的な隣国

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http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%8A%E3%82%AB%E3%83%B3
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%91%E6%98%8A