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日本の銀行の生き残る道

ある日の朝、銀行の前に大きなバスが何台か止まっていた。社員全員が出社したころを見計らって総務がおもむろにお立ち上がり「弊行は投資銀行宣言をしますので、どこそこの部署は閉鎖します」と告げ、対象となった社員はバスに強制的に乗車させられた。残った社員は呆然としながらも命じられた対象社員の監視役をこなし、対象となった社員には泣き崩れるものもいた。

上記の話は、来星まもなく人づてに聞いた話しだ。商業銀行はブランドがあるが、その内実は支店網を構築し、預金を集め、貸出しを行なう労働集約型の古いビジネス。小切手の使用率が高い国では、決済業務にも人海戦術であたっている。日本の銀行の海外送金手数料が高いのも、ひとえに日本の人件費が高いからでもある。

銀行貸出ビジネスは「雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘をあたえるビジネス」といわれる。お金の出所は預金者のお金なので、貸出先はお金を借りる必要がないぐらい優良な企業である必要がある。ではそんな優良な企業は、お金を借りるのだろうか?

答えは高度成長期なら、企業の成長に資金繰りが追いつかず、成長の速度を鈍化させないため、企業はお金を銀行から融資を受けるが、成熟した経済では企業は過去の企業活動から生まれた内部留保資金が潤沢にあるので借りる必要がない。また成熟した経済には株式市場など、優良企業が銀行を通さず、株式を発行して資金を得る仕組みが備わっている。つまり銀行貸出は高度成長を前提としたビジネスである。

高度成長期が終われば、貸出先の資金需要は衰える。商業銀行がとる道は二つの道しかない。一つはビジネスの鞍替え。預金の活用先がないことを認め、商業銀行であるやめること。上記の投資銀行宣言はその一例。「利子から手数料へ」との掛け声のもと銀行の支店は投資信託、保険等の代理店業務に手を広げることもあるが、支店で集めた預金が活用されない現実は変わらない。苦し間際に預金を価格変動の激しい証券(株、国債投資ファンド)に投下したり、従来、貸出しの対象とならなかった中小企業を、国の保障をもとに貸出しの対象とするのは問題の先送りでしかないが、残念ながら現在日本の銀行が歩んでいる道だ。

もう一つは、資金需要がある場所を求めて海外にでること。現在世界は発展途上国の経済成長が著しく、資金需要が高い。土地などの資産価格も上がり続けているため、住宅ローンを組んで住宅を購入する意欲も高い。この道を選択すればビジネスの鞍替えは必要ない。ただ新しいマーケットに出て行くだけだ。

なぜ国内のメガバンクは資金需要がない国内市場に固執するのだろう。自分は行員、官僚の戦略的視点の欠如が、先細りにしかならない選択に目にいく元凶と考える。