道家 (老子、列子、荘子)
孔子は常に人間の視点に立つ。聖人の徳をもって人を教化し、世の中を良くしていく。人間努力の世界。道家は宇宙的視点(道)で物をみる。宇宙的視点からすれば、人間努力はどれほどのものだろうか。道家の超越的視点には、現代科学との共通部分が多く驚かされる。ノーベル物理学者の湯川秀樹が「荘子は天才」と評するのも当然といえよう。
老子は難しい。抽象的で難解。列子・荘子は寓話的で読みやすい。道家を読み始める前は道教的な仙人思想や、占いなど迷信的なものかと構えていたが、読み終えた後は「視点は自由」、むしろ人間とう枠にとらわれて、視点を固定しないほうがいいと思える。
どうしても孔子的視点では、努力する人・しない人などの「差」が見えてしまう。翻って道家的視点では、その差が見えないどころか、努力しない人のほうが上にすることができる。そのための文脈作りとして「無用の用」など、逆説的な視点を理解する必要があるが。
正直読み始めたときは、宇宙的視点を「道」とし、人間的視点をひっくり返してしまう道家的視点は「現実的でない」もしくは「詭弁」のようにも思えた。しかし、縦横無人に視点を動かし(「魚の前に美人が立てば、魚は逃げる。それでも魚は美的感覚がおかしいといえるか?」など)、自分が今までとらわれていた「差」を消し去り、異なったものに共通項を見出す視点には、非常に感銘を受けた。どことなく数学にも似ている。
鳩山由紀夫前総理大臣のように、すべてに全宇宙的視点も持ちこみ、際立った無能さを顕示する人や、些細なことにことさら腹を立てて、職場(家族)全体の雰囲気を壊す人など、視点が固定されていることの弊害は大きい。何より、一人一人に違いがあること認め、且つそれでも「平等」だとするには複眼的視点が必要だと思えるようになった。ダブルスタンダードともいえるが、視点の固定による弊害に比べれば健全といえる。加えて、道を前にすればダブルスタンダードもシングルスタンダードになる。
最後に、環境が絡む、自分自身の影響が限られる悩みに対しては、孔子的視点より道家的視点の方が役に立つ。「差」をなくす視点を持ち込むことによって、悩みが小さく見えたり、新しい「差」がみえることがあり、発想の転換の契機となるからだ。
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