Get Things Right

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神への道

インド人の同僚が巡礼から帰ってきた。インドの神様は無数におり、そのほとんどが実在の人物。手から、銅像や金粉を手品のように出していたあのサイババも、既に神様の仲間入りとなり、お寺に祭られている。

彼曰く、お寺には「ビザ(Visa 査証)」と呼ばれている神様もおり、インド人が海外に出て働くのを助けてくれる神様もいるそうな。同僚はシンガポールに来る半年前に、その「ビザ」の像を見たため、神の力を信じられずにはいられないという。

人間の集団がある程度大きくなれば、その集団には神の役割を担うことができる人間がいる。またその需要もある。私が祈れば、雨が降る(巫女)。私に従えば病気が治る(ウイッチドクター)。私はあなたの未来が見える(預言者)、神と対話できる(シャーマン)等々。彼らは現代の言葉で言えば、ナルシストもしくは、自己肥大というカテゴリーに入るのか。彼らの言葉は一様に、未来に対して決定的な答を与えてくれる。

彼らは嘘をついているのではない。彼ら自身も己が見出す因果関係を信じている。無論、因果関係が成り立たなかった場合でも、それを説明する別の因果関係を容易に見つけ信じることができる。彼らは浅い因果関係で納得できる。そのことで不安を打ち消し、確信を容易に得ることができる。神とは、「本当にそうなのかという不安」とは無縁の存在でり、彼らはその役を演じることに向いている。

実は人間の集団は、古代に限らず、現代でも非常に呪術的な側面を持っているのでは最近は思う。なぜなら、本当は結果論でしかあり得ない現実、すべての情報など取得できない事象に対して、事前に結果を「予測」することを多くの場合求められるからだ。

身近な例では、会社において、予算を獲得し自分でそのプロジェクトの長になることは、昇進の近道でもある。そのために必要な技術が説得力。やってみなければわからないことは、いくら論理的に説明しようとも、疑心暗鬼を解くことは難しい。だから必要なのが「おお!!」と人の感情を動かす何か。心得ている人は、出会った瞬間から印象に残る笑顔。力強い握手と自己紹介。”ハイクラス”と思わせる語彙。そして人の心を奪う美しいアニメーションが導入されている社内プレゼンテーション資料。意識的、無意識的にしろ、人の感情を土俵端まで押し込んで、俵を割らせる技術に長けている人がリーダーとなることが多い。
大企業のシステム障害の対応などをみても、呪術的な要素が見て取れる。例えばある銀行のシステム障害委員会を見てみると、責任者は「元最高裁判所検事」となっていた。そのシステム障害は夜間バッチ処理が、義援金口座の振込が集中した日に朝までに終わらなかったことが原因とされている。対応にはサーバーの増強も含めて、バッチ処理の組み換えが必要だと思われるが、「バッチ処理」なんて言われても知っている人は少ない。それよりも「最高裁判所」など社会的に地位の高いひとが責任者になるほうが「神通力」が効くのだろう。人心を治めるために。

Quote”If the issue is too technical, it becomes political. If the issue is too important, it becomes emotional” Unquote, by Yoshi