Get Things Right

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比較優位に基づく人生戦略 其の4  Capitalizationとして捉える環境、そして歴史。

生まれた後に習得した知識(例えば外国語)は子供に遺伝しない。同様に腕を切断した大人が、子供をもうけても生まれてくる子供には腕がある。このようなことを「獲得形質は遺伝しない」という。自分が英語をどれだけ勉強しようとも子供には遺伝しない。しかし実際には環境を媒介として伝わっていく。親が英語を習得→英語圏で暮らす→子供は英語圏で育つ→子供は1年で英語を話す(親より上手に!)という過程。

香港には一代で巨大な富を築いた富豪の寄付で造られた公園がある。縁起を担ぐ大きな置物、金色のオブジェ等絢爛豪華に重きがあり、いかにも成り上がり的で洗練された感じがしないと聞く。似たような話は日本でもある。織田信長の「洛中洛外図屏風」は金キラの極色彩だ。

一方、元ビートルズポール・マッカートニーの娘、ステラ・マッカートニー。彼女は若くしてデザイナーとして活躍している。才能ももちろんだが、幼少の頃からセレブとして「洗練」されたファッションとはどのような価値・トレンドなのかを磨ける環境にいたことが、デザイナーとしての彼女を形成したのではないか。

洗練された文化。それは一代ではなく代々続く系譜、脈々と受け継がる環境のなかで磨かれる。そしてその系譜は「歴史」という大河に通じている。

科学も同様。明治維新後ひたすら翻訳・理解に励む一代目(含む蘭学者)。表層の理解から深遠な理解に移る2代目(長岡半太郎など)。新しい理論を生み出す3代目(湯川、朝永)。人生という限られた時間の中で成し遂げるには先代が残したもの(資本)の上に立たなければならない。

普遍的な価値観とともに歴史を資本化の過程と捉える視点が重要だ。

この様な視点で日本を見てみるとひらがな(大和言葉用)に加え、外来語に対して漢字(中華圏用)、カタカナ(欧米圏用)という2つの受容体を一つの言語で擁する日本語。そして米国と中国の間に島国として位置するその地政。英語と中国語という二言語で21世紀の立ち位置を確保しようとするシンガポールと比較しても、日本の取るべき選択肢は日本語を英語、中国語と並ぶもう一つの「極(小さくとも輝けばよい)」として利用し存在感を確保すべく努力するのが妥当ではないか。自分が家族を巻き込んで中国語、英語、日本語の3ヶ国語を学ぶ理由でもある。

Reference:
http://www.mandarin.org.sg

漢文力 (中公文庫)

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貝と羊の中国人 (新潮新書)

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漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか? (光文社新書)

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加藤 徹氏の著作は文明を意識した上で普遍性の香りを醸しだすところが司馬遼太郎を髣髴とさせる。面白い!

日本人と日本文化―対談 (中公文庫)

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量子力学と私 (岩波文庫)

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Jargon;
Capital 資本。何にかを創出するために使われるもの
Capitalization 資本化。資本として有形・無形なものとして残すこと