Get Things Right

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経済成長とはバランスシートの拡大にともなう信用の増加であり、お金とは信用を数値化したもの

投資銀行は、なぜ500億円の資本金で3000億円の資産(有価証券)を保持できるのだろうか。答えは2500億円のお金を借りているから。株、国債は現金に容易に変えることができ(流動性資産)、担保価値が高い。都市銀行も預金が集まりすぎており、金融機関の間での短期貸出しは重要な資金運用機会。

このように、大量の借金をして、大量の資産(この場合、流動性資産)を持つことで、企業のバランスシートを膨らますことは、経済を拡大させることと同義である。ただ流動性が枯渇した際、債券は現金化できない、ただの紙とみなされ、瞬時に担保価値が消滅してしまう危険性をはらんでいる。すなわち、流動性が確保されている間だけ、有効なバランスシートの拡大方策であり、今回の経済危機はサブプライム市場の流動性が低下したことで引き起こされた。

世界経済は、個人、企業、金融機関、公的機関等の、バランスシート(BS)を拡大させなければ、大きくならない。

中国・インドは、80年代頃より企業が外国資本を受け入れ成長し、個人・法人の資産が増え、金融機関の預金残高が増えている。資金需要とともに銀行貸出が伸び、成長循環が続いていることでBSを拡大している。

アメリカは新しい企業を生み、巨大な企業群を持つことで、一国のBSが大きく保たれている。

日本は政府のバランスシートを多大な借金で膨らますことによって、現在の経済規模を保とうとしている。

近年、海外では個人のバランスシートを膨らます術が出てきている。それがウエルス・マネージメント(Wealth Management)。プライベートバンク(Private Bank)と似ているが、前者は積極的に個人のバランスシートを膨らます点で違う。具体的には顧客が持っている資産のうち、株、債権、不動産、預金(外貨・定期・普通・仕組預金)など、担保となるものを銀行が一括管理し、担保価値に掛目を掛けた額を極度額(クレジットライン)として、顧客は現金を借りられる。

似た仕組みとして、日本にも大企業向けに、コミットメント・ラインという、極度額以下なら自由に企業がお金を借りられるものがあるが、コミットメント・ラインは企業の信用そのもの(大企業であるとか、格付けが高いとか)に対しての与信であり、株・債権等、顧客の資産価値をリアルタイムで把握しながらの与信ではない

日本でも証券取引法第65条の銀証分離が緩和され、銀行と証券が合併したグローバルバンキングができた後、ウエルス・マネージメントを志向するかもしれない。投資銀行的なBSの拡大は既に否定され、且つ日本の銀行は大きな渉外部隊をもっているからだ。

その際、日本の銀行は顧客の資産価値をリアルタイムで管理し、顧客のバランスシートを最大限引き伸ばす(借入れを増やす)ための勘定系システムをどのように構築するだろうか。自分はグロバールバンキングでの経験が深い、インド系のITが日本のベンダーに取って代わっているだろうと予想する。

Reference:

循環資本統計
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/sj/sjexp.pdf
http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/faqsj.htm
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/sj/index.htm

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