兵家と法家
論語(儒家)につられ、孫氏・呉氏(兵家)と韓非子(法家)も読んでみた。両者とも面白い。中国古典がこんなに面白いものだとは知らなかった。興奮冷めやらぬ前に、徒然と感想を書いてみる。
孫子の兵法は理路整然。「自分の強いところで相手の弱いところを撃つ」という考えが首尾一貫している。初めから自分が強いとは限らないので、戦う前に計略を使って相手を弱くしたり、地形の利を利用する(たとえば長細い道に大軍を誘い込む)。
また相手が大軍だとしても分離させたりして、相手との接触面においては自軍を多くし、局所においての利の確保と、局所的視点と大局的視点がともに鋭く描写されている。孫子の兵法は固定的な型を説明しているのではなく、マクロとミクロな視点を自在に操りながら状況を分析し、「自分が強く、相手が弱い」という形に持っていく為の、変幻自在な形なき型を志向している。全文は長くないので通読をお勧めする。
韓非子(法家)も視点が鋭い。彼は儒家の「聖人による感化による統治」は人口が多くなれば、非効率で現実的ではないと退ける。法律により機械的に統治する仕組みがなければ、君主の能力如何で国は直ぐにバラバラになる。韓非子以後、秦の統一王朝を初め中国の王朝は比較的大きな国土を保つようになったのは偶然ではないのでは。ともすれば法家の貢献は計り知れない。(焚書坑儒は頂けないが。。)権力の源泉、公と私の利益相反(公の字源はム=私と八=反する)など政治的現象を根源的な因果関係で説明しようと試み、その言葉は説得力に満ちている。
ともあれ、紀元前に書かれた政治思想本が文庫としておてがるに現代語訳で読め、現代の政治に関係なく娯楽として楽しめることは凄いことだと思う。
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