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 稲盛和夫の実学 経営と会計

航空産業は畑違いにかかわらず、多くの著名人が予測していた、JALの2次破綻を回避させ、80歳を目前としてJALの過去最高の収益を実現させた。京セラ、KDDIを創業し、実績の上では文句なしの大経営者の稲盛氏。昔、会計の勉強をしているときに読んだ「稲盛和夫実学 経営と会計」はあまりの名著に驚いたが、JAL再建を目の前にしてここまで優れた経営者だったとは再び驚いた。

稲盛和夫実学 経営と会計」には会計の原則として、もの・金の動きと伝票の一対一の対応が述べられている。当たり前の事とも言えるが、実務でこれほど会計情報に実在性をもたらすために重要で、普通はないがしろにされていることはない。また部門別採算性ともいわれる別名アメーバ経営は、どんな管理会計の理論よりも優れているように思われた。

会計というと財務諸表の値を、足したり割ったりして指標をつくりだすことが高等教育では主眼とされているが、実際は財務諸表の値を企業の実態を表すように積み上げるかの方が、ずっと大切で且つ、大変難しい問題だと思う。ひつ一つを正直に数字を積み上げていくことは、技術的なことから社員のモラルにまで及ぶ、深い問題だからだ。会計はすべてを数値で表すというその性格上、流動性が高いものから低いものまで、そして実在性があるものからないものまで一緒くたんに勘定というものにして扱うため、情報操作が容易い。上場企業で会計情報に誤りがあれば、経営者を塀の中に入れるという、米国のSOX法もある意味、会計情報は人のモラルに依存していることを端的に表しているよい例だと思う。

稲盛氏は会計情報を使って企業の実態を把握し、運営することの重要性を知り、またそれを実現するために必要な知恵がある。小さな部門単位で損益を管理すれば、部門のエゴが出やすい。大きな単位で損益を管理すれば、会計情報の有用性は薄れてしまう。だから、部門間のエゴを抑えながら、会社として一つにまとまって行動するためにリーダーの重要性や利他の精神を強調している。会計というテクニカルな部分から、人としての心のあり方まで統合的に扱っている、彼の著書、経営理念は世界にも他に類を見ないと思う。

会計を扱う部署は経理とも言われ、ただレポートをつくるだけの部署から、会計情報を使って経営陣に諮問する経営企画的な部署まで企業によってその位置づけは大きく変わる。稲盛氏は、会計情報を、社員ひとりひとりに対しては、売上を最大に、経費を最小にという利益最大化の原則に沿うための指針となるようにし、リーダー達にとっては、部分最適化から、全体最適化に目が行くように会計情報を使う仕組みづくりのノウハウを持っている。そしてそのノウハウは哲学や人生論というところまで凝縮されている。

稲盛和夫の実学―経営と会計

稲盛和夫の実学―経営と会計